ベンによるマウント・ウィルソン
渋滞とシティー・カオスはビデオゲームの様に楽しむしかない。登り始めてしまえば、標高が上がるにつれて自分だけの世界となっていくのだから。
まだビルとパーム・ツリーのてっぺんだけに日がさす。2日前のアンダルーシアとのコントラストにいまだ違和感を感じる。しかも半年触っていなかったスペアバイクしか持ち出せなかった。サン・ゲーブリアル・マウンテンまでの道のりは永遠と続く住宅地を抜ける。でも匂いと音で地域が変わっていくのがはっきりとわかる。メキシカン・ミュージックがアルメニア・ベーカリーの香りと変わりLAのマルチ文化性が出ている。山が近づくとボーダーははっきりと目で確認できる。まるで誰かが定規に沿って線を引いたかの様に緑から茶色と変わると住宅らしき建物は減り登りが始まる。エンジェルス・クレスト・ハイウェイで一直線に一度登ると道はワインディングし始めコーナーごとに景色が開けてくる。大空は真っ青だが、大地には白いベールが敷かれている。Si-Fi映画の様にダウンタウンのビル群がスモッグの中浮いているのが見える。かすかに大きく湾曲を描く海岸線は知る人にしか見えないだろう。
毎年1月の最初の日に開催されるマウント・ウィルソン・ヒルクライムはここから始まる。プロ、シリアスレーサー、クルーザー、レクリエーショナル・ライダーと様々なライダーが頂上を目指すが今年は調子が良くデビッド・クリンガーやイヴァン・ドミニゲスが出るなか勝ったことをコールとアーロンに自慢してしまったことから今日はジョークの対象となるはめになってしまった。だからよけいにシフトアップして奴らから逃けを図る。最後の8kmは雪が脇にまだ残り、道は狭く、ひび割れ、砂利だらけだ。頂上はラジオとテレビタワーが立ち並び、LA、太平洋とカタリナ島が足下にあるように見ることができる。でも今日は映画のセットの様に白く霞み妙に静かだ。コールとアーロンを待てば50kmをほぼノンストップで街まで下るだけだ。