左の表は、「Training and Racing with a Power Meter」(Hunter Allen、Andrew Coogan共著、2005年出版)よりの抜粋である。自転車レースのトレーニング方法を取り上げた偉大な著書であり、パワーメーターのデータ分析およびトレーニング方法に関して最も定評のある解説書である。
ここではこの表をレファレンスにしながら、2008年ツアー・オブ・カリフォルニアのプロローグにおいて圧倒的な勝利を飾ったファビアン・カンチェラーラの桁外れなパワー出力について解説する。
世界のトップレベルの自転車レースにおいては、運動能力を測定する上で、運動効率およびVO2max(最大酸素摂取量)だけでなく、パワーウェイトレシオ(出力加重費、体重1kg当たりのパワー出力で、パワー出力を体重で割ったもの、単位=watts/kg)が重要な鍵となる。
左記の表に示されたような数字を叩き出せなければ、いくら最先端技術を駆使した機材を使用しようとも、誰にコーチを受けようともまったく無意味なのである。レベルが高くなればなるほど、高いパワー出力を叩き出せなければレースで好成績をあげることなど不可能だ。つまり、プロの自転車レーサーとしての夢を諦めて、他の職を探した方が良いということだ。
長く厳しいトレーニングの繰り返しにより、ある程度のレベルまで達することは可能であろう。しかしながら、いかなるトレーニングをもってしても、遺伝などの先天的な素質や才能なしには自転車レーサーとしての成長に限界があるのも事実だ。
されではここでトップレベルのパフォーマンスの例を紹介しよう。

世界選手権個人タイムトライアルチャンピオンであるCSCのファビアン・カンチェラーラが、2008年ツアー・オブ・カリフォルニアのプロローグで叩き出した平均速度は時速56.3kmh、優勝タイムは3分51秒だった。2位に入賞したチームハイロードのブラッドリー・ウィギンスに4秒も差をつけての優勝だ。しかも、ウィギンスは、2004年オリンピック大会においてトラックの追い抜き競技でメダルを何度も獲得している有能な選手である。
ファビアンの体重は80kg。プロツアーの選手の中でも最も体重の重い選手の1人だ。彼の平均パワーウェイトレシオは、少なくとも5分間の運動で7.6 watts/kgであることが想定される(左の表を参照)。
これらの数字をもとに単純に計算しても、ファビアンは608Wまたはそれ以上のパワー出力を4分間も断続的に持続したことになる。この数字はファビアンにとっては低めの数字である。パワーウェイトレシオがいかに重要な数値なのか、これで理解してもらえることだろう。
ファビアンのパワー出力データは、平均的な自転車レース初心者が10〜12秒間持続可能な数字の最大値に等しい。 |