今中大介氏(以降敬略):ツール・ド・スイスを走ってから帰国したばかりですね。お疲れ様でした。
別府史之選手(以降敬略):どうもお疲れ様です。
今中:2月からプロツアー始まったんだけれども、一番成績として残ったツール・ド・ロマンディが印象に残ってると思うけどロマンディはどうでした?
別府:そうですね。去年、全日本選手権を獲ったので、日本のナショナルチャンピオンジャージを着てヨーロッパで活躍したかったから、どのレースも狙ってたんですね。そしてチャンスが巡ってきたのがツール・ド・ロマンディだったんですね。第3ステージは平坦基調のステージだったんです。それでも三回山岳があるハードなステージだったんですけどね。
でも、そのステージで逃げたかったんで、最初から攻撃に出たんです。そしたら逃げが決まったんですよ。
今中:でも、その逃げもね。アタックをどんどんかけて、自分でもどれが決まるか分からない中でフミ(別府選手の愛称)は特に飛び出すタイミングも知ってるし、実力あるから強引に行けるわけで、一回では無く他にもアタックが有ってのことでしょう?
別府:そうです。0kmメートルで一回アタックをかけたワケじゃなくて、何度も何度も、何度も何度もアタックを繰り返した一回がその逃げにつながったから、その集団が少し離れた瞬間に「これはもう決めなければいけない」と思ったんです。
今中:そのタイミングって、もの凄く難しくて。んー、、、例えば、幸せな選手っているよね。他の選手がお膳立てをしてくれて、自分は20番手くらいに居続けて、出るときに出れば良いって選手。でもフミは自分でレースを作って、コントロールして、なおかつ出て行くって、その辺が大変だった思うけど、そのメチャクチャ太い背筋が示すとおりタイムトライアルが速いとか独走力があるというのは、自分の攻撃パターンとして大切にしたいよね。
別府:一年目の2005年からやってきたことを活かしたかった。僕の仕事である前半での仕事だったこともあって、そういう状況に慣れていたのを活かせたのかなって思います。
今中:そう。どうしてもアシスト然として動いてしまうから、勝負感っていうものが無くなっちゃうってことが有るでしょ? で、良いタイミングで逃げられて最後まで行けるようなことになれば良いんだけど、例えば去年出場したチューリッヒ選手権では国際映像で初めてあんな風に映った日本人選手は初めてだった。あの大会でも逃げて、あそこから最後までというのが現実的に難しい。でも今回ロマンディでは自分でレースを作って、引っ張って、最後の最後ほんの少しで勝てたという本当に惜しいところまでいって二位に入賞したよね。UCIプロツアーポイントをちゃんと獲るというのはプロとして大きいことだよ。
別府:そうですね。プロとしてやってきた事の形となるし、もちろんこれからのモチベーションにもなっていくし、大切なのかなって思いますね。
今中:そうだね。本当にツール・ド・ロマンディはお疲れ様でした。
それで、お疲れのもう一つ。ツール・ド・スイス。これはアシスト役として最初から働くということで出たレース?
別府:そうですね。今までの走りが認められて、急遽走ることになったのですけど、チーム的には凄く喜んでくれて、チームとして走りきることが大切だったのですけど…
今中:僕もツール・ド・スイス走ったことあるんだけど、ただ座骨神経痛で最初の方でリタイアになっちゃったんだけどね。フミがナショナルジャージ着て走ってるのを(テレビ)画面で見て応援してたよ。なかなか自分の走りができないよね。
別府:そうですね。ツール・ド・スイスって特別で、山岳がカテゴリー超級で凄い厳しい山岳が続くので、僕は山は登れるけどトップクライマーじゃないから、活躍する場所があまり無いのでそれまで逃げていられるかというのも危ない選択なんですよね。山に入って遅れてしまったら取り返しの付かないことになるから。
今中:そうね。スタミナ使い切ってしまって、その日タイムオーバーなんてことになったら話にならないもんね。必ず完走して次の自分のレースにつなげなければいけないからね。
別府:はい。だからそういった部分でも走りきるっていうことが良い経験になった。ツール・ド・スイスという厳しい山岳のステージが続く九日間の長いレースを走りきったということが自信にもなりましたし、そういう部分ではとても良かったです。
今中:スイス経験したら、パリ〜ニースだってそうだし、ジロだってツールだってブエルタだってその延長線上なんだし、その期間が長くなるだけでね。やっぱり経験しないとね何も言えないってことあると思うんでね。どんどんそういったビッグレースへステップを踏んでもらえればと思います。
話は変わるけど、ちょうどフミが向こうに行った頃にプロの世界が変わったのかな。UCIのシステムが変わって、プロツアーという仕組みになって、だいたい20チームで毎年走ることになったんだけど。それ以前のプロレースってあんまり知らないよね?
別府:そうですね。知らないです。
今中:今、(プロツアーを)走っててどう? まぁ、走りやすいだろうね。プロチームの走りを追求できるからね。
別府:そうですね。毎回走るチームもメンバーもだいたい同じだし、レベルも同じくらいで走りやすいですよね。“毎年このレースはこの時期にやる”というスケジュールもきちんとプログラム組まれてるので、そういう面でも走りやすくて良いと思ってます。
今中:あのー、年の始めに大体の“自分のレース出場予定計画書”みたいなのって、渡される? このトレーニングレースでコンディショニングして、どのレースにぶつけるって分かるようなもの。
別府:はい。
今中:僕がプロになった94年は“プロはこう走るべきだ”っていうのがあって、今のUCIと同じような方針だったんだけど、翌95年にいきなりシャッフルされて、プロとアマチュアが一緒になったような感じになったんだよね。そしてプロとアマチュアが一緒にレースをすると、まずはアマチュアが最初から全力でいきなり高速でどーんって走るような、後は体力勝負みたいな展開になっていく。
今でもツール・ド・フランスに近いレースだともちろん入れ込んでるから、スタートからどんどんかけ合いになることも多いだろうけど、中にはプロレースらしいというか、ゆったりとした始まりのレースも多いよね。
別府:そうですね。比較的プロツアーレースは、ゆっくりレースが進行して、後半に勝負かけるっていうのが多いですね。で、アマチュアチームと混合になると、アマチュアチームが激しく動くので、忙しいレースになりやすいですね。でも国というか地形ですね。プロツアーで各国まわりますけど、地形によってレース展開が変わるなと感じますね。
今中:オランダのレースは走った?
別府:オランダはアムステルゴールドくらいですね。
今中:あー、そうか。それは最初っから(プロでも)ある程度全開だね。オランダは木が斜めに生えるほど風の強いところだから、そこでのレースは風を読んで進んでいくんだけど、そんな厳しい環境でハイスピードな走りをしていると、55km/hの巡航ができるようになる。50km/hが苦もなく普通に出せるようになるよね。やはりその地域にいるからその環境に強くなるというか、山にいれば山に強くなるようにね。
別府:そうですね。地域柄っていうのありますね。プロツアーじゃないのですけど、この間ベルギーで走ったレースも序盤平均時速55km/h超えてましたしね。まぁ、最初と最後しかペース上がらないんですけど。でも、そういう意味では昔と今も変わらないのかなと思いますけどね。ただ、ある程度チームがコントロールするので、そういう面では違うのかなとも思いますね。
今中:チームがコントロールするっていうのは、そうだな、例えばドイツのニルンベルグのような地方のレースすると、プロチームがコントロールして当たり前っていう風な展開になりやすくて、そういったアマチュアチームにいつもより多めに引かされたりしない?
別府:そうですね。でも、そこできちんとチームの名前とスポンサーをアピールしないといけないですからね。一生懸命走りますよ。
今中:そうだね。名のあるチームがコントロールして当たり前って見られるから、その上でしっかり仕事ができてちゃんとエースを勝利に導くことができるという、その辺もプロならではという事なんだよね。しかし、やはりそれは昔も今も変わらないんだね。
別府:そうですね。スポンサーそのものと、チームの強さをしっかり見せつけようというものだから、それは大きく変わらないんだと思います。
今中:まだシーズンは終わらないけど、ひとまずここまでお疲れ様でした。
別府:ありがとうございます。お疲れ様でした。 |