今中:これからはトップツアー株式会社の森社長を迎えまして、サイクリングと旅行のことについてお話をしていきたいと思います。
森貞夫氏(以降敬略):よろしくお願いします。
今中:森さんは仕事柄いろんな所に行かれてますよね?
森:そうですね。何カ国行ったか正確に数えてみたことはありませんが、営業をしていたころはお客さんを連れて行ったり、下見に行ったり結構な数の国にを行きましたね。
今中:アフリカに行かれたことはありますか?
森:アフリカと南米には行ったことがないのですよ。日数がかかってしまうでしょう? 営業をしていたものですから、長いこと空けてしまうと、営業先のお客様にご迷惑がかかってしまうので、長くても二週間以内ですね。
今中:南米というと飛行機だけでも二日がかりだったりしますものね。マイアミ経由で一度コロンビアに行ったことがあるのですが、二十四時間まるまるかかった記憶がありますよ。
森:まだまだあの辺りは交通手段が整備されていないですからね。
別府:ちなみに今までいらっしゃったところで好きな場所はありますか?
森:そうですね。バケーションや出張旅行、観光旅行といった目的によって感じ方が違うので、どこと決まったところは無いですね。リゾート一つ取ってみてもビーチリゾート、レイクリゾートやマウンテンリゾートもありますし、バリエーションが多いですから。
今中:そうですね。ヨーロッパなんかだと、バカンスがあって一ヶ月滞在ってこともありますしね。そうなると、毎年行くわけですから、ここと決めることができないというのもありますよね。
森:フランスなんかは強制的に休みを取らせないと法律に触れるということもありますからね。
別府:そうですね。僕は今、フランスのマルセイユに住んで居るんですけど、本当に彼らは一ヶ月、二ヶ月平気で休みますからね。バカンスの期間は当然、お店も休まれてしまうので僕としてはとても困るんですけどね。(苦笑)
森:自転車選手をしていると、いろんな所にレース行くでしょう?荷物なんかはどうしているのですか?自転車も含めて大荷物になるでしょ?
今中:彼(フミ)なんかはスッキリしたスーツケース一つで行くみたいなんですよ。
別府:自転車はチームが全部保管してくれてまして、トラックに積んで、陸送で運んでくれるんですよ。なぜなら、飛行機で運ぶと、飛行場で破損してしまうトラブルに見舞われるのを回避しようというのもありますし、選手に運ばせる負担を軽減しようという狙いもあります。
森:今中さんの時はどうだったのですか?
今中:僕の頃は、みんな自分の乗ってる自転車がベストポジションだったので、それを毎回大きな輪行バックという袋に自転車を入れて持って行っていたのですよ。

森:空港の中で見たことありますよ。
今中:あ、ありますか。なんでそんなに大きなバック背負ってるの?みたいなやつです。イタリアだと、北部が自転車の盛んな地域なので、いろんなチームのイタリア北部に住む選手がミラノのリナーテ空港にそれぞれ見送りの奥さんを連れて、あれ(輪行バッグ)を背負って集まって、空港からチャーター機を飛ばして行くんです。イタリアの選手は一斉にレース開催地に向かうという態勢をとってました。それはそれで雰囲気あって良かったですけど、大変でしたね。(笑)
森:そうでしょうね。(笑)
今中:でも今は便利ですよね。
別府:はい。そうですね。旅行に関しては飛行機の予約からチームに居るトラベルエージェントが全てやってくれるので、楽ですね。また今、Eチケットという発券システムを使うと、パスポートだけ持っていけば飛行機に乗ることができるので、本当に便利ですね。
森:私は自転車は素人なんですけど、サイクルスポーツというと、どうしてもヨーロッパじゃないですか。まだ東南アジアやアメリカでは、あまり聞かないじゃないですか。
今中:そうですね。しかし今、別府君が籍を置いているチームがアメリカのチームでして、アームストロングというツール・ド・フランスを前人未踏の七連覇した選手がいたチームなんですよ。
別府:アメリカだと十年くらい前までは自転車というとマイナーだったのですが、今、伸び始めているスポーツなんですね。カルフォルニアなど温暖なところを中心に、盛んに行われるようになってきたんですよ。
森:そうなんですか。
今中:日本でも健康意識で乗られてる方多くなりましたよね。
森:最近すごく多いですよね。たまたまこういう商売をしているので、目に付きやすいというのもあるのですが、弊社の社員で本格的に競技自転車に乗ってる者が結構多いのですよ。また弊社の総務部長が大学の自転車部の監督をやっていたりするのですよ。
今中:はい。私もトップツアーさんにそういう方が多くいらっしゃることは存じております。
森:そんな背景もあって、私もサイクルスポーツについてはセンチュリーライド等やっていく中で、これはある意味、“的”を獲ているなと感じるのですよ。ひとつとしては、現在のキーワードとして“エコ”は外せない訳ですよね。自転車というのは環境に優しい上にみんなで楽しめますよね。それと競技大会だけでなく、イベント的な大会などの開催で、サイクルスポーツの普及に努める方々や地域、自治体のみなさんと一緒になって取り組んでいくことは、地域の活性化が叫ばれる昨今、大きな意味があると思うんです。そして、もっと言えば、自転車選手を目指す人達をバックアップしたり、サイクルスポーツの普及・推進に少しでも協力できればと思ってるのですよね。そういう意味で、弊社が地域や社会に貢献できるのではないかと思えるものがサイクルスポーツなんですよね。
特に現代の日本では企業の社会貢献が求められています。私たちも一企業として社会貢献の形の一つとして、サイクルスポーツをとらえています。それとチョット変わったところでは海外の植林なども進めているのですよ。
今中:海外の植林ですか。
森:そうです。まさに砂漠に木を植えましょうというやつです。中国の砂漠に植林をしたり、オーストラリアのケアンズにケナフという木を植えさせて貰っているんですよ。また他の企業さんにもお願いしてこの活動に協力を呼びかけさせて貰ってるんです。
今中:なるほど。今現在、環境があっても、これからはエコというしっかりした意識がみなさんにある上でツアーが成り立つわけでしょうしね。そのエコという意識は自転車に乗る、またはそれを勧めるということで既に分かりやすく具現化しているわけですね。
森:そうですね。どんなに環境に害が少ないをエンジン積んだ乗り物よりも自転車は環境に優しいですからね。
今中:そして通勤通学ばかりでは無く、趣味でロードレーサーに乗り出して、しばらくすると多くの方が坂を上ってみたくなるんですね。
森:でも坂って体力的により厳しくなるんですよね? なぜですか?
今中:そこには満足感や達成感があるからなんです。だから坂を上れば上るほど、また坂を上りたくなるんですね。
森:そういうものなんですか。
今中:そうですね。例えば子供の頃、隣町に歩いて行くだけで、すごくワクワクしませんでしたか? その感覚をまた甦らせてくれるツールのひとつが自転車なんですよ。
森:なるほど。それにね自転車ってエコだけじゃなくて、健康にも良いでしょ。以前、テレビで得た知識ですけど、自転車の乗車姿勢でペダルを漕ぐという動作は医学的にも身体に良いらしいじゃないですか。
別府:そうですね。血液の循環もそうですし、身体に負担もかかりにくい上、良いエクササイズになるのですよね。
森:それにもう一つ、昨今、話題に上り続けるストレスの解消にも良いらしいですね。自転車に乗ることで、手軽にいつもと違う環境に触れることができ、ストレス解消につながるらしいじゃないですか。また、私なんかはメタボリックの兆候が出てると健康診断で医者に言われるんです。その解消法として勧められるのがウォーキングなんですね。心臓に負担かけてはいけないという意味で勧められるのですが、自転車もね無理をしなければ負担はかからないわけですよね?
別府:それは確かに山を上ったり、追い込まなければそうですね。
森:まぁ、それはさっきもお伺いしたとおり、ステップを踏んでそうなっていくんでしょうから、もし、そうなるとしてもウォーキングで慣らしてジョギングに移るのと似た経緯になると思いますしね。(笑)
別府:そうですね。そして山道を走るようになると、意識しなくても自然が目に付くようになるんですよ。先ほどエコの話がありましたけれど、僕も自然の中ばかり走っているものですから、必然的に自然と向き合うことになって、自転車も人間も自然と共存していかなければいけない部分があると考えるんですよ。また、自転車は望めば今の状態でほとんど技術的な要素を必要とせずに、自然との共存が可能な道具なんですよね。そういうことに気が付く。しかし、都市にずっと居ると、そういうことが見えにくくなってしまったりするんですよね。それも地域や自治体が努力して、もしくはそれを助力して自転車イベントにつなげていければ、または一人でも多くの人が興味を持って自転車に乗ることになってくれたら、自然の中を走ることで改めて自然というものを気付かせてくれる。自転車って、人間にとって良いサイクルを与えてくれる良いものだと思うのですよね。
森:私もね、昔は自転車って実用性のみの道具だと思っていたのですけどね。最近、いろいろ話を聞くと、今、一台何十万円もする自転車がよく売れるそうじゃないですか。実用性のみの道具なら、機能を考えるとその値段では売れないですよね。だから自転車というのはもう実用性ありきの道具から既に脱皮したユーザーの多岐多様な要望に応える道具になっているのではないかと思うのですよね。
今中:そうですね。その答えの一つとして有名人、著名人を含めて、自転車を楽しむ様々な方が増えてきたんですよね。そしてユーザーが増えればそれによるイベントを開催する。ユーザーに喜んでいただくのは当然ですが、それによって地域が活性化される。というように、相乗効果でみんなが喜ぶ。というようなすばらしい状況になると思うんですよね。例えばツール・ド・フランスのスタート地点を誘致するために、各町が1億円くらい予算を用意しているんですよ。特にツール・ド・フランスは“競技を伝える側のスタッフ”も一流の方が集まっているので映し出す光景がとても美しいんですよね。
森:それは私もテレビで視聴していて思いました。美しい風景と、迫力のある光景を見ることができますよね。
今中:世界中でツール・ド・フランスは190チャンネルくらいで放送されていて、延べ人数で20億人くらいが視聴しているんですよね。
日本ではまだまだなんですけれども。しかし自転車が健康的や広く楽しめるスポーツということと、経済効果を期待できるいうことを含めて発展性を感じますよね。
森:世界大会のようなビッグレースを日本にも誘致するといのは難しいのですか?
今中:日本ですと宇都宮で行われる“ジャパンカップ”というレースが唯一世界のトップレーサーを呼んで開催される大会があるんです。別府君も昨年出場してくれた大会なんですよ。ここ一年くらいで自転車に乗る方、特にロードレーサーに乗る方が増えてるんです。そんな方々が楽しめるイベントをさらに増やしていきたいですね。
別府:プロチームに入ってから去年はじめて参加したんですけど、すごい声援を受けました。日本で走る機会があまりないですからね。すごいモチベーションになりましたよ。ヨーロッパの選手も軒並み観客から大歓迎されてましたし、外国の選手達もジャパンカップのイメージは良くてまた来たいって言われるような大会なんですよ。
森:そうなんですか。日本でロードレースの世界規模の大会を開催するのもそうですが、もしくはジャパンカップをもっと盛り上げるというような取り組みをしていく必要がありますよね。プロスポーツの興行は海外に比べて、日本という市場では成立しやすいって言うんです。なぜなら、スポンサーがつきやすいらしいんですね。世界バレーや世界陸上がほとんど毎年日本でやってるのはそういう理由があるからだそうですね。だから自転車も、もっと日本人にアピールするために大きな大会をできたらいいですよね。それでファンの増加はもちろんですけど、選手を目指す人も増えてくるでしょうし。
別府:僕も日本にプロになるための土壌が無かったので独学で全てやってきたのですけど、それがとても大変で、プロになるには遠回りだったんですね。幸いにしてそれらの苦労は自分にとってはプラスに働きましたが、これからの若い選手にはもっとプロになるための良い環境を日本に築く必要があると思うんですね。
森:そうなると私は今中さんの出番じゃないかと思うんだけどね。(笑)
今中:自分自身も子供の頃に、ぱつんぱつんのあの自転車ウェアを着るとね、親にすら「それは着ないで」って言われるくらいだったんですね。それに比べたら現在は多くの人がサイクルスポーツをウェアから認知してくれていて、幸せに感じるんだけれども、ヨーロッパでは既に百年以上の歴史を持って、自転車競技が国技になってる国があるくらいですからね。ヨーロッパのスポーツ新聞は普段サッカーの記事が一面を飾ってることが多いのですが、ツール・ド・フランスの季節になると、それが逆転して自転車の記事が一面に踊るんですね。そんなことがヨーロッパでできるスポーツは自転車とF1くらいなものなんですね。それほどサイクルスポーツにはポテンシャルがあると思うんですね。今、日本では自転車にとってこの一年、二年の変化時期があるので、この波に合わせて自転車への意識を育てていきたいと思ってます。
森:我々はサイクルスポーツに対してバックアップをこれからもしていきたいと考えているんですけどね。今、企業の社会貢献という話もありましたが「トップツアーさん、あなたの会社は何をやってるの?」って問われた時に「ウチはサイクルスポーツに力を入れてます」って自信持って言えるようにみんなで取り組んでいこうって言って、徐々にですが、できる範囲でステップを踏んでいるのですけどね。
今中:サイクルスポーツをメジャーにしていくための協力していただける企業でありたいという。
森:ですよね。あれもこれもと数を上げればいろいろあるのでしょうが、まずは一つ一つ着実に、“これは”というものを作って、裾野を広げていきたいです。そういう意味でホノルルセンチュリーライドなどはJALさんと一緒に最初から取り組んでいます。もっと多くの皆様にご参加いただきたいのですが、飛行機の座席数の問題がありまして、なかなか…。希望者はまだまだいらっしゃるのでね。それも次を考えていこうと思ってるんですよね。
別府:素材的に自転車はレースだけじゃなくて、いろいろできるから、やり方次第でいくらでも発展性はありますよね。
今中:そして究極のところは「みなさんがサイクルスポーツを楽しんでいただく」というところですよね。その上で成立しているというのは間違いないですよね。これだけは見失わないように、僕らはやっていかなければいけないですよね。
森:そうですね。「スポーツを楽しむ」というところから始まるわけですよね。そしてその中から優秀なアスリートが出てくるわけですよね。だから裾野を広げることが重要ですよね。
今中:しかし、底辺には健康意識のある子育てからある程度解放された40代の方が多くてですね。
森:なるほど。確かに健康志向の人たちの裾野は広がってますよね。
今中:ただですね、今、アニメや漫画などの大メディアでサイクルスポーツが描かれていて、その影響で親が「子供にやらせたいんです」みたいな人が増えていてですね。そういうこともあって、中高生の人口も増えてきてるんですよ。
別府:そうなんですよ。今までサイクルスポーツというものが目に付きづらかったから、気付かなかった、知らなかっただけで、アニメや漫画のようなビジュアル的に分かりやすくて、規模の大きいメディアで気軽に目にすることができれば、サイクルスポーツに触れる機会を得られると思うし、どんどん自転車というものが露出していけば、もっとたくさんの人達が興味を持ってくれんじゃないかと思ってます。
今中:アニメ・漫画は本当に影響大きいですね。今、その影響を与えている物語は、まさに別府君が今、プロチームに所属していることそのものをイメージできるものなんです。どうしたらプロになれるの?と、おぼろげながらもプロロードレーサーというものをイメージできるものなんですよ。
別府:たしかに僕も日本人で近い世代にプロが居なくて、イメージしにくかったんですよ。しかし僕は絶対プロレーサーになりたいと決意して、プロになるために三年間のスパンを設けて、それでプロになったんですけど、僕がプロになったことで、アマチュアとプロの間にある壁の向こう側であるプロが見えるようになったというか、存在そのものが近くなったというのがあって、僕がプロになった後に、ヨーロッパのプロサイクリングのファンになったという日本人の方も多いですし、選手になるためのシステムが見えてきたというのが大きかったと思います。今、プロになって三年目ですけれど、今後経験を積んでグランツールに出られるようになることが楽しみですね。
森:その時に一人でも後輩が続いていると良いよね。
別府:そうですね。プロを本気で目指す後輩に僕と同じことさせたくないんですね。僕がプロになった時は今中さんを含め、多くの方の作った道のお陰でなれたのですけれど、これを僕だけで閉ざしてしまうと次回はさらにプロへの道が厳しくなるんですね。だからこれから後輩がどんどん続いて欲しいのですが、日本側の体制が悪いと、それができなくなってしまうので、そうはしたくないんです。
今中:今のサイクルスポーツをやってる十代の若い世代が、以前だったらほとんどが競輪に行ってしまったのですが、ロードレースにも目を向けてくれるようになってきましたし、またそれを応援したい大人も増えてきたので、これを良い循環に持っていきたいですよね。
別府:僕もそういう若い世代が僕を応援してくれているのも知ってるし、若い世代に学ぶことも多いですから、彼らの存在は良いモチベーションになるので頑張って欲しいです。
−最後にみなさまそれぞれの立場でサイクルスポーツの普及に対してのメッセージをください。
今中:僕の役割というのは、「サイクルスポーツを望むみなさんに楽しんで頂きたい」、「その輪を広げてもらいたい」というのが根底にあるので、自転車をスポーツとしてしっかりと楽しんで頂くための基盤作りを今後していきたいと考えています。
別府:僕の役割は日本人がサイクルスポーツでヨーロッパのトッププロとして走ってるということをたくさんの人に伝えたいです。日本人を代表して世界を走ってるということをもっともっとアピールしていきたいです。
森:最後に私どもは全国に100以上の支店・ネットワークを持って、各地に密着した企業活動をしています。その中で、いかにしたら地域に貢献できるかということを常に色々考えているんですね。本日のテーマであるサイクルスポーツの普及と振興に向けた取り組みを通じて、サイクリストの人たちと、地域の人たちと、そして私たちが三位一体となってですね…… そんな大それた所までいかなくとも社会に少しでも貢献できるようなこと、先ほど今中さんの言った私が一番大切だと思ってる“みんなが楽しい”ということの手助けができるようになれるならそれは意義あることだと思います。
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